「あの雲の上は、どんな風景なんだろう?」
「あの雲を上から見たら、どんな風景なんだと思う?」
ある日、お子さんからこんな素朴な疑問を投げかけられました。 外を見ると、今にも雨が降り出しそうな真っ黒な雲が空を覆い尽くしています。
「うーん。〇くんは、どんな風だと思う?」
私はあえて答えを言わず、質問で返しました。
長年、子どもたちと過ごしていると、彼らが質問してくる時には二つの理由があることに気づかされます。
一つは「相手の意見を知りたい時」、そしてもう一つは「自分の考えを誰かに聞いてほしい時」です。
今回は、明らかに後者でした。
「あのさ、僕は雲の上は晴れ渡っていると思うんだよね。どんな形をしているんだろう。波打っているのかな。それともモクモクなのかな、海のような感じかな。飛行機に乗ったら見えるよね。見てみたいなあ」
想像の翼を広げ、夢中で話す姿……。
ある研究者は「子どもは小さな疑問を抱えた存在だ」と言いますが、私には、どの子も頭の中にたくさんの「?」を詰め込んで生まれてきた、「小さな博士」に見えるのです。
「言葉にならない気持ち」を汲み取るということ
その子は、まだ飛行機に乗ったことがありませんでした。
図鑑もすでに調べ尽くしたといいます。
そんな時こそ、私たちの「奥の手」の出番です。
「だったら、どんな雲か一緒に描いてみようよ!」

その瞬間、子どもの目がパッと輝きました。 いそいそと鉛筆と裏紙を準備し、私の前に座り直したとき、その表情はイキイキとした生命力に満ち溢れていました。
子どもの言葉をただ鵜呑みにするのではなく、その奥に眠っている「言葉にならない好奇心」や「表現したい欲求」を汲み取ってあげること。
それこそが、子どもとの信頼関係を強く、太くしていく魔法なのです。
親御さんの「声に出さない気持ち」に寄り添って
本来、こうした時間は親子の対話の中で育まれるものかもしれません。
しかし、現代の親御さんは本当に多忙です。
ご家庭の事情や、ご自身の人生プランを大切にするために、子育ての一部を他人に預ける決断をされている方もたくさんいらっしゃいます。
私は、預けてくださる親御さんたちの「本当はもっと関わってあげたいけれど……」という声に出さない気持ちも、まるごと汲み取っていきたい。そう願ってもいます。なかなか難しいですが。
後日談もご紹介しましょう。
空の上から撮影してきた、実際の雲の写真を子どもたちに見せました。
想像を膨らませていたその子は、「思っていたのと、まったく違った!」と、のけぞって驚いていました。

この「驚き」こそが、学びの原動力です。 いろんなことに興味を持ち、調べ、実際に手足を使ってやってみる。そのプロセスを楽しみながら、子どもたちは自らの手で「自分」という軸を創り上げていくのです。
やってみることで、「違いやあいまいさ」などもはっきりとわかります。それを埋めるために再び調べ直してやってみる。こうした繰り返しが、結果として記憶を定着させ、広くて深い理解にもつながっていきます。わからなかった部分、間違いを放置せず、手間と暇を惜しまないことが、学びの質も高めていくのです。






