昨日のブログ記事「夏休み、ゲームばかりで大丈夫?科学が立証する子どもの『人間力』が爆発的に伸びる黄金時間の過ごし方」をお読みいただき、ありがとうございます。 あの記事では、夏休みこそが子どもたちの「生き抜く力」、すなわち「非認知能力」を育む絶好のチャンスであることをお伝えしました。
記事を読んで、「非認知能力という言葉は知っているけれど、なぜそんなに大切なの?」「本当に子どもの将来の幸せに関係あるの?」と、さらに深い疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、
- 「非認知能力」とは、具体的にどのような力なのか
- なぜ今、これほどまでに重要視されているのか
- 子どもの一生を左右するこの力を、家庭でどう育んでいけば良いのか
これらの疑問に、ノーベル賞受賞者の研究という、多くの方が信頼している科学的根拠(エビデンス)を基に、分かりやすくお伝えします。
「非認知能力」とは?最新の学習指導要領が示す「人間力」の土台
まず、「非認知能力」とは何かを、具体的に見ていきましょう。 これは、IQや学力テストのような数値では測ることができない、「人間性の土台」となる内面的な力のことです。例えば、以下のような力が挙げられます。(あくまでも一例です)
- やり抜く力(グリット):目標に向かって、情熱を持って粘り強く努力する力
- 自己コントロール力:自分の感情や衝動を律し、目標のために目の前の誘惑に耐える力
- 好奇心(チャレンジ精神):新しいことに興味を持ち、失敗を恐れずに挑戦する力
- 誠実さ・協調性:他者を思いやり、ルールを守り、仲間と協力して物事を進める力
- 楽観性・回復力(レジリエンス):物事を前向きに捉え、困難から立ち直る力
では、なぜ今、この力がこれほど注目されているのでしょうか。 その答えは、近年行われた学習指導要領の大改訂にあります。2017年では「生きる力」という言葉が導入され、教育界にどよめきが走りました。さらに、最新の学習指導要領(*1)では、これからの子どもたちが身につけるべき資質・能力を「三つの柱」として示しています。

赤い円の中にある「人間性」こそが、「非認知能力」の鍵となります。
国が教育の根幹として、知識や技能だけでなく、「どのように社会や世界と関わり、よりよい人生を送るか」という人間的な成長を、これまで以上に重視する時代になったことの、明確な表れと言えるでしょう。
ノーベル経済学賞ジェームズ・ヘックマンが証明した衝撃の事実
では、なぜこれほどまでに「非認知能力」が注目されているのでしょうか。
その最大のきっかけとなったのが、2000年にノーベル経済学賞を受賞した、シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン博士による長年の研究(*2)です。
ヘックマン博士は、「ペリー・プレスクール・プロジェクト」という有名な追跡調査を行いました。 これは、1960年代に、経済的に恵まれない環境にいる3〜4歳の子どもたちを対象にした実験です。子どもたちを2つのグループに分け、一方のグループにだけ、言語や数といった基礎知識の学習と、仲間と協力して取り組む遊びなどを組み合わせた「質の高い就学前教育」を提供しました。
そして、彼らが40歳になるまで追跡調査を続けた結果、衝撃的な事実が判明したのです。
質の高い教育を受けたグループは、受けなかったグループに比べて、
- 高校卒業率が高く、学歴も高い
- 持ち家率が高く、収入も多い
- 生活保護受給率や逮捕率が著しく低い
という、人生のあらゆる面で、圧倒的に良い結果を出していました。

人生の”成功”や”幸福”を決めるのは 「IQ」 ではなかった
ヘックマン博士がこの調査で突き止めた、最も重要な発見。
それは、彼らの人生の成功を分けたのは、読み書きそろばんのような「認知能力(IQ)」の差ではなかった、ということです。
教育を受けたグループの子どもたちは、小学校に上がる頃にはIQの差はほとんどなくなっていました。しかし、彼らは就学前の教育で、やり抜く力、自制心、社会性といった「非認知能力」をしっかりと身につけていたのです。 この「非認知能力」こそが、その後の学習意欲や就労、ひいては人生全体の幸福度を左右する、真の鍵であることを、ヘックマン博士は経済学的に証明しました。
つまり、親の学歴や収入といった家庭環境に関わらず、幼少期にどのようなアプローチ(質の高い関わり)を受けるかで、子どもの精神的・経済的な満足度は決まる、ということが明らかになったのです。
これは、社会全体にとっても、将来の医療費や生活保護費を削減する効果があることを意味します。さらに最新の研究では、学童期(12歳)までに多様な体験をしている子どもは、65歳以上での認知症になる確率が低いというデータも出てきています。
すべての土台は「安心」できる家庭から。では「質の高い育児」とは
では、この最も重要な「非認知能力」を育むために、家庭で何ができるのでしょうか。
ヘックマン博士も、様々な研究者も、口を揃えてその基盤となるのが「質の高い育ちの環境」、中でも「安心感」を感じるのことできる環境であると指摘しています。
子どもが、「自分はここにいて良いんだ」「ありのままの自分を受け入れてもらえる」「自分のことを本気で考えてくれている」と感じられる、温かさやぬくもりに満ちた『環境』です。
この精神的な安らぎこそが、すべての土台となります。これらを基盤として、子どもは他者を信頼し、新しい世界へ挑戦する勇気を持つことができるのです。
私たち親は、子どもの幸せを願わない日はないでしょう。
そのために、まずは子どもとの日々の関わりの中で、温かい言葉をかけ、話をじっくり聞き、その子の存在そのものを丸ごと受け入れ、適切な躾を施す。そして何よりも、子どもが大空を翔いていけるように支援をしてあげることです。

まぁはすでは、そうした「心の安全基地」の支援者としてありたいと願っています。
この「非認知能力」を具体的にどう育んでいくかについては、また別の記事で詳しくご紹介します。
- 文部科学省、平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm
- ジェームズ・ヘックマン教授の論文概略 (英文)
https://heckmanequation.org/wp-content/uploads/2013/07/F_HeckmanDeficitPieceCUSTOM-Generic_052714-3-1.pdf


