「他人の振り見て、我が身を直せ」
昔からある言葉ですが、子どもたちは日々の体験から、まさにこれを実践し驚くほど多くのことを学んでいます。
先日、子どもたちと村田製作所の体験ラボへ出かけた時のことです。
次の体験を待つ列に、まぁはすの子どもたち、AくんとBくんが並んでいました。
その時です。
後ろから来た二人の子どもが、無言で列に割り込むだけでなく、Aくんをグイと押し除けて、前にいた自分たちの親らしき大人の元へ合流したのです。
私は少し離れた場所から、その一部始終を黙って見ていました。
AくんとBくんは、この予期せぬ出来事にどう対応するのだろうか、と。
Bくんは、押されたAくんを気遣う言葉をかけていましたが、割り込んできた子たちに何かを言うことはありませんでした。
(そっか、何も言わないのか…)
その瞬間、私の心に少しだけ寂しい気持ちがよぎりました。
外に出ると、いつもの元気な「まぁはすの顔」とは違う、「おとなしい顔」になってしまうのだろうか、と、心がズキっと痛みました。
しかし、私のその心配は、嬉しい形で裏切られたのです。
全ての体験が終わり、お弁当を広げた時のこと。
まるで示し合わせたかのように、Bくんが先ほどの割り込みの話を切り出したのです。
きっと、私がその場を見ていないとでも思ったのでしょう。Aくんもすぐに話に加わり、二人の間では、あの瞬間の出来事が大きなテーマとして心に残っていたことが分かりました。
そして、Bくんは私に意見を求めてきたのです。
「ああいう時、どうすればよかったんだろう?」とー
子どもたちの心の中では、ただ黙っていたのではなく、どう行動すべきか、思考がフル回転していたのですね。そのことが分かり、私は嬉しくなり、次のような話をしました。
「そうだよね。それはイヤだよね。
例えば、『すみません、僕たちが先に並んでいましたよ』と静かに伝えてみることはできたよね。
または、その子たちの親御さんに『前に入りたいのであれば、一言、ボクたちにも声をかけてくれると、嫌な感じもしないし、嬉しかった』と、お願いしてみる方法もあったかもしれないよね」
すると、Bくんがハッとした顔で言いました。
「あのさ、この間のテレビでやっていた『ゲーム脳』になると、人がどうなるかっていう番組を見たんだけどさ。手が震えているんだよ。止まらなくなっちゃうの。それから、周りの人も見えなくなっちゃう。なんかさ、あの子達、そんな感じしない?」と、Aくんに話ししていました。
Aくんも、「あー、無我夢中で体験していたもんね。」
Bくんは、やっぱりそうだよなという態度を取りながら、「ボク、気をつける」と、力強く言っていました。
いかがでしょうか?
彼らは、他人の行動をただ批判するのではなく、自分たちの学びとして昇華させていました。
そんな彼らに、私は、もう一つ話をしました。

「ピンチ」を「チャンス」に変える瞬間。
「もう一つ、大事なことがあるよ。これから日本はどんどん少子化が進んでいく。そうするとね、君たちのように、相手の気持ちを考えたり、思いやりを持って行動できたりする人の価値が、ものすごく高くなる。どんな仕事でも『あなたに来てほしい』と頼られる人になる。つまり、こういう社会の変化は、君たちにとっては大きなチャンスでもあるんだよ」
「おぉー!」と、の目が輝きました。
ピンチはチャンス、とよく言われます。
目の前で起きた小さなトラブルや、少子化という大きな社会の変化。
そうした「ピンチ」を、どうすれば自分たちの成長の糧(チャンス)に変えていけるか。それを考え、行動する力こそが、これからの時代を生き抜く上で、何よりも大切なのだと思います。
テキストで知識を与えるだけでなく、その知識を実生活でどう活かすか。
日常のあらゆる出来事を「生きた教材」として、子どもたちと共に考え、対話し続けること。
まぁはすは、これからもその役割を大切にしていきます。


