最近、街を歩いていると、建設現場やお店、ごみ収集、介護の現場など、様々な場所で外国から来た方々が活躍されている姿を目にします。子どもたちのクラスにも、外国にルーツを持つお友だちが増えてきています。
私たちの社会は、もはや多くの国の人々の力なしには成り立たない、多様で豊かな共同体となっています。
このような時代に、私たちは子どもたちに、自分たちの国「日本」について、何を伝えていけばよいのでしょうか。

海外の方と話していると、「多くの日本人は、自国の歴史や文化について尋ねられても、うまく説明できない」という声を、驚くほど多く耳にします。とても残念で、もったいないことだと感じます。
原因の一つは、もしかしたら学校での歴史の学び方にあるのかもしれません。 日本の歴史は、旧石器時代から始まる、非常に長大で豊かな物語です。しかし、限られた時間の中で、どうしても年号や出来事を覚えることに終始しがちになる、という話も聞きます。
知識の一つとして年代と出来事を知ることは大切です。 しかし、歴史とは単なる暗記科目ではありません。なぜ、その出来事が起こったのか、昔の人々は何を考え、何に喜び、何に苦しんだのか。それこそが私たちに日本人の「心」の物語に触れることではじめて、歴史は「生きる力」に変わるのです。
自分たちのルーツを知り、その文化に誇りを持つこと
それは、他者をむやみに排除したり、自分たちだけが特別だと考えたりすることとは全く違います。
むしろ、自分の足元がしっかりしているからこそ、胸を張って他者と向き合い、相手の文化にも深い敬意を払うことができるのです。
子どもたちには、将来、世界中の人々と心で語り合える人になってほしい。
そのためには、「源氏物語はね…」「このお祭りの意味はね…」「この道具はね…」などと、自分の言葉で日本の魅力を語れる豊かさを身につけてほしいと、切に願います。

歴史を学ぶことは、過去を知ることだけではありません。 先人たちの知恵と失敗から学び、今の社会を見つめ、そして未来をより良く創っていくための「羅針盤」を手に入れることです。
夏休み、お子さんと一緒に、近所の神社やお寺の由来を調べてみませんか? 博物館に出かけて、昔の人の暮らしに想いを馳せてみませんか?
そうした小さな体験の積み重ねが、子どもたちの心に、グローバルな時代を生き抜くための、確かな「根っこ」を育ててくれるはずです。


