
AIは、子どもの敵ではありません。けれど “丸投げ” は、子どもの育つ力を静かに奪っていきます。 今日は、私がいま強く感じている心配と、その奥にある研究、そして「ではどうすればいいのか」を、親御さんと学校の先生方に向けてお話しさせてください。
「宿題はAIにやらせてる」と、子どもが言う時代
コロナ禍が明けたころから、塾に通う小学校高学年の子どもたちが、ふとこんなことを口にするようになりました。「宿題、AIにやらせてるよ」。
学校の宿題も、塾の課題も、AIにおまかせ。それも一人や二人ではありません。その話を聞いたとき、私は胸がぎゅっと締めつけられるような、強い心配を覚えたのです。
昨日のセミナーで、あの子たちの顔が浮かびました
先日、精神科医で作家の樺沢紫苑先生のお話を聞く機会がありました。先生のお話を伺いながら、あの子どもたちの言葉が、ふと胸によみがえってきたのです。
AIは「答えのある問いに答える」のが、とても得意です。なにしろ “人工知能” ですものね。だからこそ、人間が頼りきってしまうと、 “知性” が育ちにくくなる。人間性そのものにも影響があるのではないか——先生はそう警鐘を鳴らしておられました。

臨床から作家へ、そしてSNSでの発信へと活動を広げてこられた先生の根っこには、「予防」という想いがあるように感じました。私自身、元心理士としてカウンセリングよりも、人格形成ができる学童期の子どもたちの成長支援に軸足を移したのも、一対一の関わりに限界を感じ、「問題が起きる前に」と願ったからにほかなりません。だからこそ、先生のまなざしが、すっと胸に入ってきたのだと思います。
研究が、静かに示していること
少しだけ、根拠となる研究もご紹介させていただきます。
ひとつは、2025年6月に発表された、アメリカ・MIT(マサチューセッツ工科大学)の実験です。学生さんにエッセイを書いてもらったあと、「自分が書いた内容を、どれくらい覚えているか」を調べたものでした。
正確に引用できた割合の結果:
自分の力で書いたグループ:約89%
ChatGPTを使ったグループ:0%
ただし、これは査読前の論文で、対象も54人とごく少人数です。今年に入って「再現性に乏しいのでは」という反論も出ていますから、慎重に受けとめる必要があります。それでも、AIに頼ったグループほど、自分が書いたはずの内容を思い出しにくい——その傾向が数字にあらわれていること自体は、示唆に富むと私は感じました。
もうひとつ、ポーランドの医療現場の報告も、よく似ています。
AIに3か月頼った医師が、その後、AIなしでの病変の発見率を落としていた、というのです。
大腸内視鏡の質をはかる指標が、AI導入前の約28%から、導入後はAIなしの検査で約22%へと下がったと報告されています。大人の、しかも熟練した専門家でさえ、こうなのです。育ち盛りの子どもたちは、どうなると思いますか?
では、どうすればいいのでしょう
大丈夫です。樺沢先生は、その答えも優しく教えてくださいました。大切なのは、自分で考え、自分の言葉で出し、間違いから学び直すこと。
「インプット → アウトプット → フィードバック」

ここで強調したいのは、「AIを取り上げましょう」という話ではありません。AIを用いる『順番』なのです。まず自分の頭で考え抜く。そのあとで、AIを “壁打ち相手” にする。この順番さえ守れば、AIはむしろ心強い味方になってくれます。逆になった瞬間に、力は育たなくなる。それだけのことなのです。
たとえば、作文の宿題。いきなりAIに「書いて」とお願いするのと、まず自分でうんうん唸りながら書いてみて、そのあとで「もっと伝わる言い方はある?」とAIに相談するのとでは、子どもの頭の中で起きていることが、まったく違います。前者では何も残りませんが、後者では「自分の考え」という芯が、ちゃんと子どもの中に残るのです。実はこれは、私がこのAIと文章をつくるときに、自分自身に課していることでもあります。考えるのは私、整えてもらうのがAI。その線だけは、譲らないようにしています。
まず、大人から
ありがたいことに、セミナー後、少し先生と個別にお話をする時間をいただきました。そして、先生はこうもおっしゃいました。
「まずは、親がスマホやデジタル機器の使い方を見直すこと」。
ほんとうに、その通りだなと思いました。子どもは、言われたことではなく、見ていることを真似ますものね。これは大きなヒントをいただいたな、と感じています。
宿題を “片づけるもの” ではなく、”自分の頭で考え、約束したことを守る練習” に戻してあげる。それは、本物の体験の中でしか育たない力だと、私は信じています。

ご家庭で、教室で、よかったら少しだけ、意識してみてくださいね。
