「〇〇を食べると、健康に良いらしい」
「このニュース、本当なのかな?」
テレビやスマートフォン、友人との会話から、私たちの生活には毎日、膨大な情報が流れ込んできます。その中には、私たちの心を揺さぶる、衝撃的で、感情的な言葉も少なくありません。
私たち大人が、ついその情報の勢いに呑み込まれそうになる時、隣にいる子どもたちは、その情報をどう受け止めているのでしょうか。 この情報の大海の中で、我が子が羅針盤もなく漂流してしまわないように。親として、私たちは何ができるのでしょうか。
今日は、情報に振り回されず、自分の頭で考え、判断する力(クリティカル・シンキング)を、家庭でどう育むかについて、3つの習慣をご提案します。
なぜ、子どもは情報に「呑まれやすい」のか?
まず、前提として、子どもは大人よりも情報の影響を受けやすいことを、私たちは理解しておく必要があります。 一つには、脳の発達段階として、物事を多角的に見たり、感情をコントロールしたりする前頭前野がまだ成長の途中であること。そしてもう一つは、比較検討するための知識や経験が、大人よりも少ないためです。
だからこそ、大人が意識して、情報の「受け止め方」を一緒に練習してあげることが、何よりも大切になります。
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合言葉は「それ、ほんと?」家庭で育む習慣
作家の半藤一利氏は、「日本人は言葉が作った流れに熱狂しやすい」と警鐘を鳴らしました。感情的な言葉の奔流に身を任せる前に、家庭でできる「立ち止まる」練習をしてみましょう。
習慣①:「立ち止まる」練習をする
衝撃的なニュースや、センセーショナルな見出しに触れた時こそ、チャンスです。 私たちが、まるで「瞬間湯沸かし器」のように脊髄反射で「ひどい!」「許せない!」と反応するのではなく、まずはお子さんの前でこう言ってみましょう。
「すごいニュースだね。でも、本当かな?すぐに信じる前に、一回落ち着いて、他の情報も見てみない?」
この「間」を一つ置く親の姿が、感情に流されずに冷静に物事を見る「自制心」の、何よりのお手本になります。
習慣②:「情報源はどこ?」を探る冒険
次に、その情報が「どこから来たのか」を探る、探偵のような冒険をしてみましょう。 「この記事を書いたのは、誰だろうね?」「個人のブログかな?新聞社かな?」「この動画を投稿した人は、何を伝えたいんだと思う?」 情報には、必ず発信者の「意図」があります。その背景を探る習慣は、言葉をうわべだけで受け取らず、その裏にあるものまで見通す、深い洞察力を養います。
習慣③:「自分の言葉で話してみる」対話の時間
これが最も重要な習慣です。 何かを見たり聞いたりした後、お子さんにこう問いかけてみてください。
「今の話、〇〇ちゃん(くん)の言葉で説明すると、どういうことだった?」
他人の言葉を、一度自分の頭で整理し、再構築する。このプロセスこそが、情報を鵜呑みにせず、自分なりに「理解」するための鍵です。
そして、「あなたはどう感じた?」「どうしてそう思う?」と、その子の意見や感情を、決して否定せずに最後まで聞いてあげてください。この対話の積み重ねが、自分自身の考えに自信を持つ「自己肯定感」を育みます。

まとめ
最高の贈り物は「情報の受け止め方」という羅針盤
これからの時代、子どもたちを全ての情報から守り、無菌室で育てることは不可能です。 私たち親ができる最善のことは、情報の大海を渡っていくための、「自分で考える」という、一生ものの羅針盤を手渡してあげること。
それは、耳障りの良い言葉に熱狂せず、感情の波に呑み込まれず、自分の心と頭で、進むべき道を決める力です。
その力こそが、変化の激しい社会を生き抜く、本当の「生きる力」となるのではないでしょうか。


